森ノ宮キャンパスについての考えを表してみたエッセイです。学生雑誌企画『起草』に寄稿させていただいたものとなります。
ある一日のお話(雑誌企画『起草』寄稿エッセイ)
※こちらは2025年12月に雑誌企画『起草』第1号へ寄稿させていただいた、大阪公立大学森之宮キャンパスに関するエッセイになります。
8時33分。森ノ宮駅に到着。大阪城に背を向け、人も車も多い森之宮の地を歩いていく。歩道橋の上で顔を上げると、遠くにビル群が見える。機体を輝かせて、飛行機が上を通ってゆく。
8時47分。大きなドアをくぐる。警備員さんに挨拶をして、混んでいるエスカレータを横目に階段に足をかけた。ロの字型になっている校舎に巻き付くような軌道で5階まで上ると、心なしか人が少し減ったような気がする。一応スマホで部屋を確認。角を曲がって、教室に入った。窓の外には、検車場と大阪城公園の木々、そして小さな大阪城の天守閣が見える。
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私の建築に関する知識はゼロに等しい。
が、この建物を設計した人はすごいな、といつも思う。
この限られたスペースに必要な教室や設備を詰め込んだうえで、少しでも閉塞感のない形にしようとした結果が、この大きな吹き抜けの形なんじゃないだろうかと私は思う。このキャンパスには、体育館がある。各種実験室も揃っている。図書館もあるし、食堂もある。そしてもちろん、大中小様々な教室がいっぱい。
新キャンパスは1つの建物しかないのだと私が初めて知った時、正直とても驚いた。前期に利用した様々な施設が一つにまとまるとは思えなかった。しかし同時に、楽しみになったこともまた事実だった。
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10時27分。少しの消しカスを携え、知識の流入がひと段落して少しぼんやりとした頭のまま階下へ降りていく。鼻先をかすめる、焼き立てのパンの香り。空腹を感じつつ、4階のカフェの前を通り過ぎた。目的の階、その奥のほうにある教室群の一つに入る。手早く出席登録を終え、2限目の授業に向けて準備を整える。テレビの放つ青色の光が目に痛い。
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森之宮キャンパスの全貌を見た時、その設計は本当にすごいと思った。少なくとも私たち1回生が必要とする設備が、すべてうまい具合に入っている。分岐の有無を階ごとに使い分けて、アクセスの良さが要求される学生課から、静かな環境が要求される研究室まで見事に収めてある。まあ、その分構内構造は複雑だが。
それだけでなく、各所に設置された学習スペースも目を引いた。静かな環境で勉強ができる「フォーカススタディルーム」から、対話のための使用が想定されていると思しき「メイカーズラウンジ」、そして集団で学習する時にも一人で学習するにも向いている「学習ラウンジ」や「学生ラウンジ」。図書館内にもずらりと学習用机が並んでいる。また、教室の空き状況を手軽に確認できるサービスが提供されており、同一建物であることも相まって、空き教室で勉強することのハードルも低い。前期に中百舌鳥キャンパスに通っていた私にとっては、このバラエティ豊かな学習環境が一番気に入った。
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12時17分。教室を出て、友達と連れ立って1階まで降りてゆく。出入口のところで別れ、そのままの足で「多目的ブース」へ向かった。時間を確認してから予約しておいた一室に入り、パソコンを開く。今日は部会の日、中百舌鳥キャンパスにいる部活の先輩たちと通話を繋げるためにここに来た。しばらくすると、他の1回生の部員もやってきた。カメラをオンにして、森之宮キャンパス側の顔ぶれを知らせる。
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建物はよくできていても、サークル活動・部活動ではまだまだ苦労する点が多い。私は中百舌鳥キャンパスにある部室に行く時は毎度自腹を切っている。私の所属する文芸部ことのはでは、部誌の作成を人の手で行う都合上、何かと人手がいる場面が多い。しかしそのような理由で、後期に入ってからは悪いと感じつつも少し足が遠のいてしまった。私はまだ恵まれている方で、毎週練習があるような運動系・音楽系のサークル・部活などはひどく大変だろうと思っている。
それでも、(そのように苦労されている方からはヒンシュクを買うかもしれないが)私は「まあ、新しいキャンパスができたってそういうことだし、仕方ないよね」と思っている人間だ。今は始まったばかりの森之宮キャンパスに、いつか固有の部活とかサークルとかができるといいな、とも考えている。府大由来、市大由来の部活・サークルが多い中、それはまごうことなき「公立大でできた部活・サークル」だろう。
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13時8分。部会が終わり、解散する。3限目は空いているので、その時間を遠隔授業の課題に充てることに決めた。ひとまず多目的ブースの近くにある学生ラウンジの一席に腰を下ろし、課題を確認する。
どうやら、今回は本を探す必要があるようだ。課題内容を記憶して、座ったばかりの椅子から立ち上がる。5階の図書館を目指して、学生ラウンジを後にした。
学生証をタッチして、入館。今回は、NDCを参考にして直接棚のところへ行き、いい本がないか探してみることにする。書架の間を歩き回っているうちに、いつの間にか手には何冊かの本。そろそろ潮時かと思い、席についてパソコンを開いた。黙々と作業を進める。
あらかた片付いたことに満足して、ちらりと時計を見ると14時43分。いけない、もうすぐで次の授業が始まってしまう。手早く片付けて本を返却棚に置き、急いで次の教室へと向かった。
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森之宮キャンパスに設置された、大学で必要とされる様々な設備の中でも、私がとりわけ気になっていたのは図書館であった。この図書館をどう評価するのかは人によるだろう。いろいろ納得できる批判も聞いており、それらにとやかく言うつもりはない。ここではあくまでも率直な意見を、ということで私一個人から見た図書館を書かせていただく。
私は工学部に所属している。だから、少なくとも今私がしている専門の勉強は、あまり図書館と縁がない。そういう立場からすると、ここは特定の専門分野の本がとりわけ多い・少ないといったことがない、バランスがよい図書館で、新たな本との出会いがあった点は気に入っている。また、今だけだからと、総合科目で専門とかけ離れた分野のものを履修している私にとっては、時々ありがたくさえある。一方で、やはり大学図書館にしては資料の保管スペースが狭く見える。書庫も、中百舌鳥と比較してそこまで広くはない。
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16時26分。今日の最後の授業が終了した。机についた電源タップからプラグを引き抜き、パソコンを片付ける。
長い階段を降りて1階へ。警備員さんに挨拶をして、駅に向かって歩き始めた。遠くには依然としてそびえたつビル群と、静かに見守る天守閣。ふと、生協で買おうと思っていた物を思い出す。一瞬立ち止まるが、また明日にしようと思い直し、再び足を前に出す。
そんな先延ばしを続けてもう1週間経っていたことを、電車に乗ってから思い出した。
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記事を書かせていただくにあたり、私にとっての森之宮キャンパスとは何かを考えてみた。
たどり着いた結論は、「『公立大』の新キャンパス」。私にとっては、その言葉が一番しっくりきた。
名前こそ一つになったものの、「府大」と「市大」の融合への道のりはまだまだ長いように感じていた。その由来の差はアイデンティティの一つとなり、コミュニティ内での団結の強化にはよい効果を発揮するだろう。しかし、同じ大学なのにどうも分断されているみたいで、「公立大」に入学した身からすると少し悲しかった。「公立大」の新キャンパスが開構したことで、今後公立大生全員に共通の体験が生まれ、それが融和を生み出すならば、それもまた良いだろうと私は思う。
それにまだ、キャンパスができてから3ヵ月弱しか経っていない。現時点で何もかも決めつけずに、ここから何十年もの間使われるだろうこのキャンパスが、そしてそれを取り巻く環境がどう変容していくかを待つのも、また一つの向き合い方ではないだろうか。
ここまでお読みいただきありがとうございました。最後に少しだけ『起草』の宣伝を。
『起草』はことのは外部の有志による学生雑誌企画です。『起草』ではこの他にも、大阪公立大学について、特に去年9月に新しく開かれた森之宮キャンパスについての、多種多様な意見を取り上げております。以下のリンクよりどなたでもお読みいただけますので、ご興味があればぜひご覧ください。
https://note.com/kisou_omu

